家電-コラム-家庭向け太陽光発電システムって実際どう?-“ソーラーマニア”藤本健が体験した5年間【第3回】
太陽光発電のために家を建て(第1回)、複数の代理店との見積もりも終わり(第2回)、やっと太陽光発電ができる家が完成した。これが、2004年の12月末。その後、東京電力と電力の売買契約と、実際に電気の接続をする手続き「系統連系」が、12月27日に完了。紆余曲折を経て、やっと長年の夢である太陽光発電が運用できる準備が整った。
しかし、実際にどのくらい発電をしてくれるのか、売買電による収支はどうなるのか、ほとんど想像もつかない中のスタートだった。今回は、これがどんな結果になっていったのかを紹介していこう。
■ 発電量ピークは11時半、曇りでもそこそこ発電――我が家の太陽光発電事情
手続き自体は12月に完了していたが、新居に引っ越したのは正月明けの1月5日。そのため、我が家の太陽光発電は実質的には2005年1月からのスタートとなった。
日々の発電量は、家の中に設置してあるモニターでチェックする。我が家のモニターは、6年前の製品だけに、現在のものと比較するといたってシンプルだが、とりあえず発電している電力をリアルタイムに確認できる。また、ボタン操作によって、今日1日で発電した電力量が見られるほか、これまでの総発電量やCO2の削減量もチェックできる。さらに、クルマのトリップメーターと同様に、リセットしてからその時点までの発電量も測れる。これを利用して、毎月の発電量をチェックしている。
もっとも"太陽光発電マニア"としては、そうした測定結果を機械任せなどにはしていられない。毎日の発電量をチェックして、ノートにつけるとともに、その日の天気も合わせて記載している。それをこの6年間欠かさず行なってきているのだから、我ながら感心してしまう。とはいえ、最近のモニターはそうした日々の記録も自動でできるほか、PCと接続してデータ転送できるようになっているそうだから、この何年かの進歩はかなり大きいようだ。
このモニターをリアルタイムで見ていると、いろいろなことがわかってくる。その1つが、発電量は常に一定というわけではないということ。前回紹介したとおり、我が家に搭載したのはシャープの3.6kWのパネルで、パワコン(パワーコンディショナーの略。太陽光で発電した直流の電気を、家庭用の交流に替える機器。インバータとも)は3.0kWとなっているが、冬は晴れていても、瞬間的な発電量は1,800Wくらいがいいところ。最大でもようやく2,200Wを超えるかどうかといった感じなのだ。ちなみに、我が家は真南よりも若干東を向いていることもあって、この最大電力は我が家にとっての「南中」である11時半ごろの数値となっている。
また、冬よりも夏の方が有利だ。これは、我が家の屋根が4寸勾配(約22度)ということもあり、太陽が差し込む角度とパネルの角度がちょうど良い。5月ごろだとMAXで2,700Wくらい出る。
さらに、曇っていてもいてもそこそこの発電はしてくれることも分かる。曇り具合や時間帯にもよるが、ある程度明るければ1,000W以上発電する。一方、夕立で空が真っ暗になってくると、100W以下になることもある。
ところで、過去6年でほんの数回だけ、発電の電力が3,000Wを超えた瞬間を見たことがある。それは、「曇った日」で「雲の隙間から直射日光が思い切り差し込んだ瞬間」という共通の条件が整った時だ。曇りの日に発電するのは散乱光(大気や雲によって散乱されて到達する光のこと)によるものだが、これに直射日光が加わると、受ける光エネルギーが大きくなり、3,000Wを超えたのだろう。また、それまで直射日光が当たっておらず、太陽電池パネルの温度が上がっていない状態のところ急に陽が射すので、発電効率が高まったということも一因として考えられる。
かなり強力な電力が発生しているが、パワコンの容量範囲内のようで、特に問題もなく発電してくれた。
■ 深夜電力を利用して初年度からプラス。初期投資額は10年で回収できる計算に
このような瞬間の発電電力も気になるが、実際に意味が大きいのは発電量。発電量の単位は、W(ワット)ではなくWh(ワット時)。そう、電力×時間によって決まる「電気の量」、これこそが電気代に直結するのだ。
ソーラーオーブンの仕事はどのようにしますか?
たとえば、今年5月における、毎日の発電量を記録した下の表を見てほしい。晴れた日は20kWhも発電する一方で、雨だとたった1kWhと、大きく差がついてしまっている。もちろん、20kWhのすべてを売電できるわけではなく、自家使用分を除いたものを売るわけだが、昼間にあまり電力を使わなければ、15kWh以上は売れるだろう。現在の売電単価は48円/kWhだから、15kWh×48円で、1日720円も稼いでくれるのだ。これを少ないと思うかもしれないが、そもそも使った5kWhだって、本来は電気代を支払うべきなのがタダになる。そこまで含めれば、かなりいい働きをしてくれることがわかるだろう。
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ただし、売電価格が48円になったのは2009年の11月からのこと。それ以前は買う電気代の単価と売る電気代の単価は同じとされていた。
そこで我が家では、契約を一般的な「従量電灯B」ではなく、夜間電力割引のある「オトクなナイト10」というものにした。
従量電灯Bの場合、いつ電気を使っても、電気代は1kWh当たり約24円であるのに対し、オトクなナイト10では、朝8時から夜22時までは割高な1kWh当たり約30円、夜中は1kWh当たり約7円という設定になっている。要は、発電する昼間は約30円の高い単価で売り、夜は安く買えるというわけだ。
その結果、基本料金まで含めた電気代の売買金額が初年度から約12,000円のプラスを記録した。ややトリッキーではあるものの、電気代のみに関していえば自給自足を達成したわけだ。
データ | 買電力 | 買電料金 | 売電力 | 売電金額 | 現行レートで換算 した場合の売電料金 | |
昼間 | 夜間 | |||||
2005年1月 | 103kWh | 83kWh | 4,059円 | 138kWh | 3,647円 | 6,624円 |
2005年2月 | 128kWh | 327kWh | 6,682円 | 213kWh | 5,665円 | 10,224円 |
2005年3月 | 109kWh | 346kWh | 6,203円 | 176kWh | 4,582円 | 8,448円 |
2005年4月 | 105kWh | 180kWh | 4,970円 | 300kWh | 8,239円 | 14,400円 |
2005年5月 | 71kWh | 98kWh | 3,466円 | 308kWh | 8,537円 | 14,784円 |
2005年6月 | 65kWh | 77kWh | 3,186円 | 236kWh | 6,465円 | 11,328円 |
2005年7月 | 90kWh | 106kWh | 4,001円 | 205kWh | 5,433円 | 9,840円 |
2005年8月 | 95kWh | 140kWh | 4,381円 | 225kWh | 6,019円 | 10,800円 |
2005年9月 | 96kWh | 130kWh | 4,394円 | 235kWh | 6,312円 | 11,280円 |
2005年10月 | 104kWh | 161kWh | 4,925円 | 173kWh | 4,550円 | 8,304円 |
2005年11月 | 90kWh | 162kWh | 4,518円 | 203kWh | 5,439円 | 9,744円 |
2005年12月 | 109kWh | 489kWh | 7,432円 | 194kWh | 5,172円 | 9,312円 |
年間合計 | 1,165kWh | 2,299kWh | 58,217円 | 2,606kWh | 70,060円 | 125,088円 |
上に載せた表は初年度の買電、売電額の月別推移であるが、現在の単価に修正すれば、収支は大きく改善される。年間売電金額は、現在換算で125,088円と、従来と比較して約55,000円もプラスになるわけだ。もちろん、支払うほうの電気代も大幅に安くなっているわけだから、その分も計算に入れれば、さらに太陽光発電による恩恵は大きくなるわけで、実質負担額170万円程度で導入した太陽光発電システムの資金も、10年ちょっとで回収できそうだ。
ちなみに我が家では、11月に売電単価が48円になって以降も、買電契約はオトクなナイト10のままにしている。細かいシミュレーションはしていないものの、夜間の時間帯で大きな電力を使うことが多いように思うので、そのままにしているのだ。
■ 太陽光発電に適した季節は?
さて、先ほど掲載した毎月の売買電力の推移を見てもわかるとおり、月によって結構数値に変動がある。売電額は自家使用分を差し引いたもので、検針にくる日によっても違いが出るが、発電量を参照すれば、毎月の差はよりハッキリと見える。下のグラフは、2005年における月別の発電量だが、季節によって太陽の角度が変化するとともに、太陽が出ている時間も大きく変化するからだ。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年間合計 |
発電量 (単位はkWh) | 306 | 263 | 324 | 396 | 402 | 312 | 295 | 359 | 304 | 228 | 287 | 296 | 3,772kWh |
発電量で一番大きい要素は、昼間の時間帯がどれだけあるかということなので、夏至のころが一番発電量が大きく、冬至のころが一番少ないということになるが、実際には天気が影響するため、ちょっと違った結果になる。そう、夏至である6月下旬はまさに梅雨真っ只中なので、日照時間は少なく、あまり発電しない。一方、冬至のある12月下旬から年明けのころは、乾燥して天気もいいため、思ったほど悪くないのだ。
そのため2005年においては、5月に最高、10月に最低の発電量を記録する結果となった。ただし、今年は8月の異常な晴れ続きによって過去最大を記録するなど、例外は起こるのだが……。
もちろん、こうした差は地域によっても大きく違ってくるだろう。この結果はあくまでも私が住んでいる横浜での発電状況という点も併せてご理解いただきたい。
■ パネルのメンテナンスは不要。ただしパワコンは2回の故障が発生
ところで、太陽光発電について人に話すと決まって聞かれるのがメンテナンスについてだ。定期的にパネルを拭く必要があるのか、パワコンは壊れないのか……といったことである。
まずパネルについてだが、これまで拭くどころか、屋根にだって1度も登ったことがないくらいなので、何もしていない。マニア的には、登ってもっと間近で見てみたいところではあるが、家の構造上はしごをかけて下から登るほかなく、そんな怖いことはできないというのが正直なところ。ただ、埃がついても雨が洗い流してくれるようで、発電能力は購入当初からほとんど変わっておらず、心配はしていない。
一方でパワコンはちょっと事情が違った。購入した機種固有の問題のような気もするが、実は過去2回故障して、丸ごと交換しているのだ。
1回目の故障は、システム設置直後の2005年3月。モニターの現在発電中の電力を見ていると、晴天で雲がかかっているわけでもないのに、妙にフラフラと上がったり下がったりすることがあるのだ。とりあえず動いてはおり、1日の発電量もそこそこ出るのだが、1、2割下がった感じではあったため、メーカーを呼んで見てもらったところ、パワコンをとりはずし、丸ごと交換していったのだ。
その後は問題なく動いていたが、2009年6月にまったく同じ現象が起こったため、ここでもメーカーを呼んでみたところ、あまり理由の説明もないままに、パワコンを新品に交換していったのだ。
完全に故障して動かなくなるわけではないので、普段モニターをあまり見ていないと、気づかない可能性が高いが、見過ごせない大きい問題ではある。いわゆる手入れが必要なわけではないが、調子をしっかり観察して問題点を見つけ出す必要性がある当たりが、太陽光発電の現在の大きい問題のようにも思う。導入したらすべて終わり、というわけではなく、末永く太陽光発電と付き合っていくためにも、日ごろの動作チェックが結構重要なのだ。
なお、太陽光発電システムの保障期間は通常10年間ある。そのため、高いコストをかけて導入したのに、1、2年でダメになってしまうという心配はない。また、ソーラーパネル部分は、本来はうまく使えば半永久的なものでもあるので、毎月の発電量のチェックなどをしっかり行なっておけば、問題を早期に発見できるだろう。
一方、パワコンのほうは基本的に消耗品であるため、10〜15年程度で寿命が来るといわれている。まだパワコンの寿命を迎えた人はそう多くはないだろうが、今後10年を経過するものが増えてきたときにどう対応するのかは、今後の大きな課題になるだろう。修理して使い続けるか、新機種に置き換えるか、場合によってはパワコンだけ他社製のものに換えるなど、選択肢はいろいろある。この辺の情報はまだまったくないに等しい状況なので、メンテナンスや寿命という問題においては、まだまだ模索が続きそうだ。
これまで3回にわたり、自分の体験談として太陽光発電の導入の経緯から購入、そして実際の発電と我が家の太陽電池について話をしてきた。最終回となる次回は、これから導入する人が「より効率よく元をとるには」という観点から、現状の補助金制度や、売電時の買取金額の今後について、さらには、売電とは別に収入を得るための「グリーン電力証書」などについて紹介していく予定だ。(最終回は11月26日掲載予定です)
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